科学史講座

科学とは、自然の見方や考え方を私たちに教えるものであると同時に、さまざまな時代・地域で行われてきた人間の活動でもあります。 自然についての私たちの理解や、自然を研究する人々のあり方は、歴史を通じてどのように変わってきたのでしょうか。 ここでは、その一端をご紹介します。

入門講義 科学の歴史

古代から現代までの科学の歴史を、ここでは大きく6つの時期に分けて解説してみます。 物理学関係に偏っていますが、全体の流れは感じてもらえるのではないかと思います。

1. 科学の源流〜古代ギリシアの遺産〜
紀元前6世紀から3世紀にかけて、古代ギリシアでは、世界各地のほかの文明には見られない性格を持った哲学や数学が発達した。なかでもアリストテレスは、経験的に知られる自然全体を理知的に説明しようと試みた。しかしこれらの成果は、6世紀頃以降、ヨーロッパではほとんど見失われた。9世紀になると、ギリシア語文献からアラビア語への翻訳が進み、イスラームで諸学の研究が進んだ。これらの成果は、12世紀になってアラビア語からラテン語にも訳され、再発見されたアリストテレスの著作が、この頃より設立されたヨーロッパの諸大学で講じられるようになった。

トピックスと読書案内[PDF]

2. 科学のルネサンス〜コペルニクスからガリレオまで〜
ヨーロッパにおける学問研究のあり方は、15世紀から16世紀にかけて大きく変化した。ギリシア語文献の研究によって、従来知られていなかった多くの思想・科学が再発見され、15世紀中頃に発明された活版印刷によって、知識の流通が勢いを増した。そうした知識の中には、「発見」された新大陸の情報なども含まれており、古代の文献は絶対的な権威を失っていった。このような時代状況の変化の一例は、コペルニクスによる地動説の提唱から、ケプラーによる惑星の楕円軌道の発見とガリレオによる望遠鏡での天体観測へと至る、宇宙論・天文学の「革命」において見ることができる。

トピックスと読書案内[PDF]

3. 科学革命の時代〜ニュートンと「新しい」科学〜
17世紀のヨーロッパは、時に「科学革命」の時代とよばれる。この時期には、機械論哲学とよばれる新しい考え方が登場し、アリストテレス的な自然観とルネサンスの魔術的自然観の両方が退けられた。またそれと並行して、数学と実験が科学的探究の方法として重要な地位を占めるようになった。こうした新しいスタイルの科学研究の大部分は大学の外側で生まれ、科学の発展や社会の向上を目的とした協会やアカデミーが組織された。これらの「新しい」科学の成果は、18世紀になると一般向けの書籍や雑誌を通じて広く知られるようになり、「ニュートン主義」が流行した。

トピックスと読書案内[PDF]

4. 「科学者」の誕生〜専門化・職業化する科学〜
"Scientist"(科学者)という言葉は1830年代に生まれた。この背景には、科学の内容が高度化して研究領域が細分化したことや、専門知識をもとにした業務や教育・研究に携わる人々が登場してきたことがある。実際、18世紀の終わりまでに、数理科学や実験科学の研究はかなり進んでいた。その結果、数式を使った理論的考察や定量的な化学分析が、正統的な研究手法とされるようになった。フランスでは、革命後に設立されたエコール・ポリテクニクで基礎科学にもとづく工学教育が始まり、ドイツでは大学が学問研究の場として生まれ変わった。科学はこうして、教育・訓練を受けた専門家のものになっていった。

トピックスと読書案内[PDF]

5. 欧米列強と近代日本の科学
19世紀には、社会のあり方を大きく変える技術がいくつも現れた。代表的なものとしては、まず蒸気機関、次いで電信などの電気技術が挙げられ、これらの出現と普及は熱や電磁気の理解と並行して進んだ。また世紀後半には有機化学や細菌学が確立し、これらも直接的に応用とつながった。日本の明治維新(1868年)は、こうした一連の変化の中で起こっている。日本では、技術導入と人材育成のために、大学や試験研究機関をはじめとする欧米流の制度が取り入れられた。第一次世界大戦(1914〜18)が終わる頃までには、欧米でも日本でも、大学や研究所での研究活動が広く行われるようになっていた。

トピックスと読書案内[PDF]

6. 巨大科学と研究開発〜原子爆弾からヒトゲノムまで〜
科学研究は20世紀のあいだに爆発的に拡大し、自然の理解と社会のあり方の両面で大きな変化をもたらした。相対論と量子力学に代表される現代物理学は、それまでの常識と大きく異なる自然像を提示したいっぽう、核兵器や半導体デバイスといった重大な発明にもつながった。同時に、この二つの例は、科学技術の領域で国家と企業が極めて大きな役割を果たすようになったことと、アメリカが主導権を握るようになったことを物語っている。他方で20世紀後半になると、DNAの構造解明をはじめとして生命現象の理解も進み、わずか半世紀後にはヒトゲノムの解読が宣言されるまでになった。ここでもやはり、巨大科学と研究開発の進展という側面が認められる。

トピックスと読書案内[PDF]

★このページについて

このコンテンツは、私が国立科学博物館で2017年度に実施した「科学史講座(通史編)」にもとづいています。 ただし、各回の内容には、講座の時点から多少変わっている部分もあります。

※「読書案内」は原則として、日本語で書かれた本で、かつ、できるだけ新しいものに限定しています。

2018/4/3