革命の出版:コペルニクスの地動説

予期せぬ結末【前へ】

参考文献紹介

この記事を書くに当たって最も参考にしたのは、

である。これには、コペルニクスの『天球回転論』第1巻と『コメンタリオルス』の翻訳に加え、古代ギリシアから始まってコペルニクス説の受容にまで至る天文学史の詳しい解説が含まれている。コペルニクスについて詳しいことを知りたければ、まずこの本を見るべきだ。

とは言え、これはかなり専門的な本なので、一般向けの入り口としては、

がいいかもしれない。著者は世界中で所蔵されている『天球回転論』を調べ、その書き込みの内容から、コペルニクス説がどう受容されていったのかを研究した。この本では、その研究成果と探究の過程が一般向けに興味深く語られている。読み物として面白いと同時に、学術的にも興味深い指摘がたくさん含まれている。

より教科書的・古典的な本としては、

が筆頭に挙げられる。今日ではいくつかの点で記述が古くなっているのと、一部に誤訳が見られると指摘されているのが玉に瑕だが、それでもなお有益な本だ。以上の三冊が、日本語で読める基本的な本のベスト3だろう。

英語の文献では、

がコペルニクス天文学の数学的側面に詳しい専門書。ただし、今回利用したのは、第1章の一般的解説の部分だけである。この中には、情報源の明確なコペルニクスの伝記がある。次に、

は、コペルニクスの「コメンタリオルス」と「ヴェルナーに対する書簡」、およびレティクスの「第一解説」の英訳を収録した本。後の二つについては日本語訳がないので、非常に重宝した。

このほか、天文学史の一般的な事柄については、ケンブリッジ大学の科学史・科学哲学科にある天文学史のサイト

にある様々な解説や史料が参考になった。また、様々な惑星運行モデルとその数学的変換を理解するにあたっては、フロリダ州立大学のDennis Duke教授による

が極めて有益だった。『アルマゲスト』のエカントを始めとする様々なモデルをアニメーションで見ることができるので、ぜひ訪れてみてほしい。

専門的な話になるが、コペルニクス研究の動向については、

に著名な研究が紹介されていて便利である。また、コペルニクス研究の一つの焦点となっているアラビア天文学との関わりについては、

の中で、これまでの研究動向が詳細に紹介されている。

最後に、コペルニクスと直接の関係はないが、古代ギリシア以降から14世紀頃までを扱う中世科学史の概説書、

をお勧めしておきたい。これを読むと、『アルマゲスト』と『天球回転論』の間にアラビアの天文学を挟まなければならないことが心底納得できる。また、コペルニクスが天文学研究を行った時代の文化状況、特に活版印刷が科学にもたらしたものを知る上で、

は欠かすことができないだろう。

訳について

「天球回転論」「コメンタリオルス」「第一解説」からの引用は、既存の翻訳(上で挙げた高橋の邦訳とRosenの英訳)をベースにしつつも、ラテン語原文をもとに私の判断で訳文をかなり変えている。これに対し、「ヴェルナーに対する書簡」は原典史料を参照できなかったため、Rosenの英訳に依った。また、ペトレイウスのレティクス宛書簡は、

にある英訳を利用している。


追記

2008年に、一般向けのコペルニクスの伝記が翻訳出版された。

コンパクトながら、最近の研究成果を踏まえて平易に書かれている。 内容はこの記事と重なる部分が多いが、興味のある人にはぜひお勧めしたい。(2009/3/9)

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2011/9/30 新装版(2007/12/24 旧版初版)
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