北海道大学大学院教育推進機構オープンエデュケーションセンター科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)からの依頼で、科学技術博物館の展示について講義を担当しました。オンラインではなく、現地での対面授業です。
今回担当したのは「モジュール1 / 科学技術コミュニケーション概論」(全5回)のうちの1回で、タイトルは「科学技術史の視点を博物館展示に活かす」です。講義の概要文を以下に転記しておきます。
博物館は、さまざまなモノを収集して保存し、一般向けに展示する施設です。とりわけ科学技術を扱う博物館の場合、収蔵庫にあるモノは過去における科学や技術のあり方を示す資料であって、その展示は必然的に科学史・技術史と関わりを持ちます。この講義では、講師自身が国立科学博物館で携わった展示の実例を紹介しながら、科学技術を伝える上で歴史的なものの見方がどのように活かせるかを考えます。
講義では特に、前職の国立科学博物館で「総合監修」の立場で関わった企画展「加速器」(2021年)を事例に取り上げ、展示制作の実際について話しました。本展は加速器を擁する研究機関との共同事業でしたが、私自身が加速器の専門家というわけではないため、展示制作にあたっては事実上、研究者と来館者を媒介するコミュニケーターとしての役割を演じたことになります。受講生の皆さんがこの事例から何か一つでも持ち帰ってもらえれば、ひとまず成功と言えるでしょうか。
今回授業をしてみて、展示制作がコミュニケーションの実践であるという認識があらためて深まりました。他方で、「科学を展示で伝える上で歴史は何の役に立つのか」という論点については、自分の中でもまだ完全には言語化できていないようです。科学技術コミュニケーションとしての展示については、まだまだ考える余地が多いということに気づかされました。