演習(大学院ゼミ)の記録
【専門書講読】
夏目賢一「山川健次郎の科学思想と尚武主義──物理学・社会学・富国強兵」
(『明治・大正期の科学思想史』(勁草書房、2017年)第2章)
本稿は、従来取り扱われてこなかった山川健次郎の国粋主義や尚武主義、そしてそれらに基づいた教育思想の展開を論じたものです。その内容に関してゼミでは、「国家に奉仕するものとしての科学」、「理学重視」を掲げる山川の科学観、山川を素朴に「物理学者」として見なしてよいかどうか、などが議題として挙げられました。本稿は、一方では国粋主義や精神主義、他方では千里眼事件などの対応や理学重視の姿勢から分かるような合理主義、という二つの傾向を一人で体現した山川健次郎像を提示していると考えられます。【滝澤】
【書評紹介】
Mark Solovey, Social Science for What? Battles over Public Funding for the “Other Sciences” at the National Science Foundation. Cambridge, Mass.: MIT Press, 2021.
Review by Audra J. Wolfe, Isis 113 (2022): 460.
アメリカにおいて、基礎科学へのファンディングを行う米国科学財団(NSF)の社会科学へのパトロネッジの変遷を追った書籍です。現在の社会科学でも散見される量的研究への偏重がかわらず1950年代から存在していたと明らかにしたのは新規性のある内容だと思います。本書は理論の歴史といった社会科学の内側からの歴史ではなく、助成や当時の社会科学者の態度といった、科学史的なアプローチで社会科学の歴史を編もうとしているという点でも、評価に値するのではないかと思います。【N】
【研究発表】
「笑いの理論の外観と新しい笑いの理論が生まれ得るかの検討」
述べたとおり自分は『ボボボーボ・ボーボボ』というギャグ漫画を笑いの哲学という観点から分析するという、どこに科学があるんだ?というテーマだったので受け止めてもらえるか不安だったのですが、様々な方に意見を言っていただけてとても嬉しかったです。
できるだけ客観的に研究すべきと思いながらも、自分自身が『ボーボボ』に対して並々ならぬ思いがあり、その中で「ギャグ」と「ツッコミ」があって然るべきという先入観から何の疑問もなく2つの項目を設けました。ツッコミがいつから存在しているか、そしてギャグよりツッコミの方が重要な可能性…とても面白いことに気づけました。自分でも興味が湧いたので少し調べてみようと思います。【西原】