演習(大学院ゼミ)の記録
【専門書講読】
中尾麻伊香「天変地異をめぐる科学思想──関東大震災と科学啓蒙者たちを中心に」
(『明治・大正期の科学思想史』(勁草書房、2017年)第7章)
本章では、関東大震災を題材に、明治・大正期に地震をはじめとした天変地異がいかに行われたかが主題として取り上げられています。内容としては、科学者自身による啓蒙(『科学知識』と今村の諸言動)といわゆる「科学読み物」のような啓蒙(『科学画報』と『世界の終り』)を対比し、それぞれの性格を分析しています。両者ともに当時流行していた「地震は天からの罰である」とする見方を反映し、科学の知識を広めようとすることに腐心していたと結論づけています。終章の「科学の公共理解」の問題など、現代的な科学コミュニケーションや科学をめぐるイマジナリーにも接続しうる話題であり、今後の研究にも生かせる点があるのではないか、と考えています。【N】
【書評紹介】
He Bian, Know Your Remedies: Pharmacy and Culture in Early Modern China. Princeton: Princeton University Press, 2020.
Review by Carol A. Benedict, Technology and Culture 63 (2022): 244–246.
今回紹介した書評で扱われていた本『Know Your Remedies: Pharmacy and Culture in Early Modern China』は中国薬局の社会・文化史を書いたものです。書評では特に明・清ごろの中国の薬学的な知識が、従来提唱されていた見方や、ヨーロッパの博物学的調査とは異なる軌跡を辿っていたことが強調されていると述べられています。重要な点はそれが他の文献群とは違う新たな洞察を持っていることと、多くの文献目録に支えられていることで歴史的な価値も生まれていることでした。
自分は英語は得意ではないのですが、中国の薬の具体的な例にも触れていそうなので(もしかすると笑いでの治癒に関わる話が出るかも…)いつか読むことに挑戦したいと思いました。【西原】
【研究発表】
「インターネットにおける専門家信頼の形成過程」
【徐】