2023年10月30日

演習(大学院ゼミ)の記録

【論文分析】

Shreeharsh Kelkar, “Post-truth and the Search for Objectivity: Political Polarization and the Remaking of Knowledge Production,” Engaging Science, Technology, and Society 5 (2019): 86-106.

この論文は、アメリカの政治的な二極化、インターネットメディアの発展、およびSTS客観性理論を分析し、「ポストトゥルース」 現象の原因を説明し、この現象に対処する方法を提案しています。著者は、革新点として、めったに相互に言及されていない2つのタイプの文献を結びつけています。さらに、著者は「ポストトゥルース」に対処するために、制度的な公共領域を構築すべきだと考えています。この公共領域は、いわゆる客観的な事実を区別するのではなく、参加しようとする人々や機関を区別するものです。しかし、著者はSTS客観性理論を主張しても、客観性理論について詳細な分析を行っていません。さらに、著者が提案した解決策には実際に解決が難しい多くの問題があるため、この提案は実用的ではないと私が考えています。【徐】

【書評紹介】

Sydney A. Halpern. Dangerous Medicine: The Story behind Human Experiments with Hepatitis. New Haven, Conn.: Yale University Press, 2021.

Review by Susan M. Reverby, Isis 114 (2023): 455-456.
本書は、1942年から1972年にかけて、アメリカで政府主導のもと行われた肝炎ワクチンの人体実験の歴史と、それを可能にした要因・終わらせた要因を探っています。ゼミでのコメントを聞いたうえで、被験者をどこで見つけてくるのか、実験中の待遇はどうだったのかなど、被験者事情を描いている点をおもしろいと思いました。また、被験者の同意なしに実験が行われたという様なことは無かったようですが、司法取引に使ったり、愛国心を利用したりして被験者を調達している点が後に非難を浴び、実験中止につながったのではと思いました。【宋】

【研究発表】

「澤井啓夫『ボボボーボ・ボーボボ』の「ムダ」が笑いに繋がるまでの考察」

ムダとはどういうものかについて哲学分野の現象学的な方向から分析を試みました。しかしながら結局のところムダとは何かについていまだに直接言及できていないことや、そもそも現象学的なアプローチからムダの分析を試みるのは正しいのかといった問題が残っています。

どのようにアプローチするのが作品にとって適切なのか、自分にとって魅力的なのか、今更ではありますがもう一度考え直してみようと思います。【西原】