2023年11月13日

演習(大学院ゼミ)の記録

【論文分析】

Kenji Ito, “Three Tons of Uranium from the International Atomic Energy Agency: Diplomacy over Nuclear Fuel for the Japan Research Reactor-3 at the Board of Governors’ Meetings, 1958–1959,” History and Technology 37: 67-89.

本日紹介した論文では、「外交的オブジェクト」(diplomatic object)という新たな分析概念を用いて、日本が国産原子炉の燃料のための天然ウランを国際原子力機構(IAEA)に申し入れたことを契機とする、IAEAの安全保障体制に関する議論の始動の様子が記述されました。ウランを中心に安全保障体制の形成過程を記述することで、ウランの存在論的側面が「外交」によって特徴づけられるように変質したことなどが論じられました。原子力分野に限らず、(少なくとも)20世紀後半の科学史における「外交」という分析視点の重要性に気付かされました。理論的研究の1つの型として、ゼミの場で検討できて非常に勉強になりました。【猪鼻】

【書評紹介】

Gregory Clancey, Earthquake Nation: The Cultural Politics of Japanese Seismicity, 1868-1930. Berkeley, Los Angeles, London: University of California Press, 2006.

Review by Alex Bates, East Asian Science, Technology, and Medicine 31 (2010): 96-99.
博論の主要な先行研究の一つとしてこれまでのゼミ内外で言及させていただいてきたクランシーの著書を、これまで書評紹介したことがなかったことに気付き、今回取り上げてみました。評者は日本の文学史の研究者ですが、関東大震災の日本人作家による文学表現をテーマとされており、そうした文化論あるいはナショナリズム論的立場という自分の研究の立場とは違った本書への視点に気づくことができ新鮮でした。何度も読み込んでいる著書ほど、改めて別の分野からの書評を読んでみるというのも先行研究との向き合い方としては一つの方法かもしれないと思います。【菱木】

【研究発表】

「パブリックアートと享受者の関係性」

修士論文題目「パブリックアートと享受者の関係性」の研究の要でもある「中動態」という概念について発表しました。言語上で動詞分析、用語の説明などの質問をいただくことで私自身が執筆するうえで把握し切れていない点などが浮き彫りにされ、有意義な時間とすることができました。【松山】