2024年9月30日

演習(大学院ゼミ)の記録

【研究発表1】

「ヴェーバーの磁気理論の形成と受容過程」

今回の研究発表では修士論文の構想とヴェーバーの磁気理論の受容過程について話しました。後者に関しては、ヴェーバーの理論の受容はそれが対象としていた現象(反磁性極性、磁気飽和)に関する研究の進展によってではなく、それが対象としていなかった現象への応用によって促進したことが論じられました。発表後の質疑応答では、修士論文のアーギュメントに大きく関わる質問が複数なされました。19世紀の物性研究における測定・実験研究の貢献を示せるかどうかが修士論文の根幹になると思うので、提出まで時間はわずかしか残っていませんが更なる論点のブラッシュアップをしたいです。【滝澤】

【書評紹介】

Michael Black, Transparent Designs: Personal Computing and the Politics of User-Friendliness. Baltimore: Johns Hopkins University Press, 2022.

Review by Luke Fernandez, Technology and Culture 64 (2023): 618-620.

『Transparent Designs』は、Michael Blackによって執筆された、コンピュータとテクノロジーにおける「透明なデザイン」についての批判的な考察です。Blackは、1970年代から1980年代にかけて、Appleのスティーブ・ジョブズをはじめとする技術エヴァンジェリストたちが「ユーザーフレンドリー」や「透明性」という理念をどのように発展させたか、その歴史を追っています。特に、ユーザーが意識せずに使える「透明なデザイン」が、逆に技術の複雑さやデザイナーの意図を隠すものであることとその背後にある不透明な権力分配を指摘しています。この本は、ユーザーフレンドリーなインターフェースの神話を批判的に問い直し、デザインや技術が社会に与える影響について深く考えさせる内容だと思います。【王藝】

【研究発表2】

「澤井啓夫『ボボボーボ・ボーボボ』の「ハジケ」と「ペース」」

今回の発表では修士論文で扱う澤井啓夫の『ボボボーボ・ボーボボ』というギャグ漫画について、『ボーボボ』はジャンプのギャグマンガとしてカタルシスを発生させることを期待されていたのではと仮定し、それを発生させるマンガ内のシステムが「ハジケ」と呼ばれるものだったのではと考えていることを述べました。

実際には全てが「ハジケ」だとされているわけではないので、それ以外のことを「ペース」として詳細を論文の中で述べるつもりでいたのですが、「ハジケ」だけでもいいのではないかとのご指摘を受け、今後「ハジケ」だけで論文を進めていくことにしました(「ハジケ」以外にも笑わせるシステムがあることを指摘した上で)。自分が現在どのような状況にいるか客観的に見られる機会となり良かったです。【西原】