2024年11月4日

演習(大学院ゼミ)の記録

【論文分析 番外編】

「参考文献の書き方」

なんとなく分かっているようで案外分かっていないと思われる参考文献の書き方について、基本的な事項をレクチャーしました。特に科学史を念頭に置いて、シカゴスタイルの注・文献表形式を中心に説明しました。【有賀】

【書評紹介】

Larry Sommer McGrath, Making Spirit Matter: Neurology, Psychology, and Selfhood in Modern France. Chicago: University of Chicago Press, 2020.

Review by Noemi Pizarroso López, Isis 115 (2020): 666–667.

評者によると、本書はアンリ・ベルクソンが脚光を浴びたフランスにおけるスピリチュアリズムを考察したものである。評者は、スピリチュアリズムの伝統を復活させることを図る点に本書の目的を見いだし、実際にその伝統が有する「美徳」を読者に提示することに成功していると述べている。また評者は、ウィリアム・ジェームズが著した『宗教的経験の諸相』が当時のフランスにどのような影響を与えたか、彼とベルクソンとの関係性がどのようなものであったかという2点の説明がやや不足していると指摘しつつも、著者がフランスの第三共和政に関する豊富で広範な情報を綿密に参照している点を評価している。

筆者である私は、上記の書評を紹介したうえで、本書を高く評価している評者の考えに関心を抱いた。具体的には、スピリチュアリズムの伝統を巡る本書の記述から読者が看取しうると考えるなにかを、なぜ評者は「美徳」という語で表現しているのか、さらにその「美徳」の内実を示すにあたって本書の記述がどのように機能しているのか関心を抱いた。こうした関心に基づき、本書を参照しながら評者による記述がどのようになされているのか探ることは、私が仮に評者の立場として本書と相対し関係をもつ場合にはどのように考え記述するかという問題を探究することにつながっている。書評紹介の担当を通して、本書の概要を把握する手がかりを得たことに加え、本書に関する書評を記す際の視座を養う契機を見いだしたことが収穫であった。今回獲得したと考えられるこうした契機を、今後の学習に継続して活かすことができるように努めたい。【Y】

【研究発表】

「2000年代デジタルアニメ研究」

2000年代デジタルアニメを対象とした修士論文執筆の構想を発表しました。2000年前後に起こった日本社会のデジタル化の急激な進展を、アニメ制作における変化という視点を軸に描写しようという目的です。とくに新海誠監督作品『ほしのこえ』(2002年劇場公開)の映像そのもののディスクリプションと、その制作過程の文献調査をつうじて、目的を達成しようとしています。【天野】