Instruction Policy
大学院の演習は、科学技術史(科学史または技術史)の専門家を育てることを第一の目的としています。ですが、「専門家」とは、大学でその分野の教育・研究を行う人とは限りません。ここ言語社会研究科でいえば、哲学、文学、芸術などを専攻しつつ、それぞれの立場から科学技術について深く考察できる人も立派な専門家だと思います。さらにいえば、大学に所属している必要すらありません。いわゆる「社会人」として仕事をしながら、科学技術史を探究し続ける選択肢もあるはずです。
演習の授業では、以上のようなことを念頭に置きながら、科学技術史の研究動向や方法論を幅広く取り上げます。具体的には、以下のことに重点を置きます:
- 日本語および英語で書かれた科学技術史の論文・書籍を批判的に読む能力を身につけること
- 科学技術史の論文を日本語で執筆し、学会などで口頭発表をおこなう能力を身につけること
- 国内および海外(特に英語圏)における科学技術史の研究動向を理解すること
題材はあくまでも科学技術史ですが、ここでの訓練や知見がほかの研究分野に応用できることもあるでしょう。第二演習(副ゼミ)としての参加も歓迎します。
このほか、各自の研究テーマに応じて必要となる一次資料の読解や、論文執筆・学会発表(日本語または英語)などについては、演習の授業と別に、自ら主体的に取り組んでいくことが不可欠です。これをサポートするため、修士論文の指導を受ける院生に対しては、個別面談の場を定期的に設けます。博士後期課程では、演習と別に「博士課程コロキウム」を開講するとともに、必要に応じて個別面談をおこないます。
受験を考えている人へ
大学院を選ぶうえで極めて重要なのは、そこに所属している教員の専門性です。一橋大学の言語社会研究科[言社研]第1部門には、現在、有賀(物理学史・数理科学史、科学博物館・科学アーカイブズ)のほかに、関連分野として安西なつめ先生(医学史・医史学、西洋近代哲学)が在籍されています。そのほかの教員の方々は、言語・文学・思想・芸術の専門家です(→大学院の教員一覧ページ)。以上をふまえると、言社研は特に次のような人に向いていると言えるでしょう。
- 外国語(特に英語・フランス語・ドイツ語・ラテン語)で書かれたテクストの読解を通じて、科学史・技術史・医学史の研究をおこないたい人
- 博物館やアーカイブズとの関わりにおいて、科学史・技術史・医学史の研究や実践に取り組みたい人
- 科学と文学、科学と思想、科学と芸術の双方に関わるテーマについて考究したい人
修士課程では、上記を問わず、科学技術の人文社会科学的研究を志す人を主ゼミ生として広く受け入れます(いわゆるSTSを含む)。博士後期課程では、原則として、科学史もしくは技術史を専門とする院生のみを受け入れます。
なお、日本国内の大学院で科学技術史ならびに関連分野の指導が受けられるところとしては、ほかにも以下が例として挙げられます。
- 東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系(科学史・科学哲学研究室)
- 京都大学大学院文学研究科 現代文化学専攻 科学哲学科学史専修
- 東京工業大学環境・社会理工学院 社会・人間科学コース(科学技術社会分野)
それぞれに課程の特色があり、教員の専門分野も異なります。よく調べた上で、自分の関心にあう大学院がどこなのかを考えるようにしてください。