2022年5月19日

演習(大学院ゼミ)の記録

【書評紹介】

Naomi Oreskes, Science on a Mission: How Military Funding Shaped What We Do and Don’t Know about the Ocean. Chicago: University of Chicago Press, 2021.

軍の介入が個別の学説の発展を促進するなど、単なる金銭的援助という役割をこえて研究に影響を及ぼしたという点が面白かったです。また同時に、軍と科学の関係というテーマの複雑さを実感しました。【澤井】

【専門書講読】

橋本毅彦『描かれた技術 科学のかたち:サイエンス・イコノロジーの世界』(東京大学出版会,2008)より

  • 「匂いのかたち」「雲の分類学」

一つ目の「匂いのかたち」は、「匂い」という見えない対象を科学的に解明する試みについて紹介されていましたが、この研究のパラダイムが起こったのが比較的最近なことに驚きました。今後の、この研究分野の進展および、日常生活への研究内容の活用がどうなっていくのか楽しみです。二つ目の「雲の分類学」は、雲のイメージを媒介とする科学と芸術の関係について論じられていました。科学と芸術の関係性は個人的に非常に興味があるので、発表で新たな知識を知れて良かったです。【S】

【研究発表】

「明治・大正期の物理学者の地震・津波研究:長岡半太郎を中心とした研究者のネットワーク形成の側面から」

《要旨》本発表の目的は、博士論文の構想とその一部となる長岡を中心としたネットワーク形成についての研究成果について報告することである。博士論文では、明治・大正期の物理学者の地震・津波研究について、共有された研究手法と研究動機を明らかにすることを目的とする。地震・津波研究を行っていた明治・大正期の物理学者のうち、特に長岡半太郎とその後輩の本多光太郎に着目する。本発表で報告した研究では、長岡に送付された1890~1920年代の論文別刷の科学分野と送付者の在籍地について分析することで、長岡が地震・津波に関する研究者とのネットワークをもち、かつ、同時代の他の科学分野の日本人科学者や研究者とのネットワークをもっていたことを明らかにした。この成果は、長岡の地震・津波研究の研究動機の積極性を示す一つの要素となり得ると考えられる。【菱木】

※この発表内容は5/29学会発表の事前練習時点のものです