演習(大学院ゼミ)の記録
【書評紹介】
Christian K. Kleinbub, Michelangelo’s Inner Anatomies. University Park: Pennsylvania State University Press, 2020.
極端に複雑であったり、物理的に歪んでいたりするミケランジェロの人体描写を医学史の観点から解釈する書籍のレビューです。画家が採用したとされる、特定の内臓の位置を強調する技法(例:欲求を司る肝臓を強調することで、欲求に支配された状態を表現)は、典型的な観相学的技法とは異なって、構図に大きく依存しており、現実の人間の内面の読み取りには適用できない点でとても興味深いと感じました。【村山】
【専門書講読】
ロレイン・ダストン&ピーター・ギャリソン『客観性』(名古屋大学出版会,2021年)より
- 「第3章 機械的客観性」
《前半》第3章は、全体を通じてアトラスに注目してはいますが、機械的客観性が何らかの具体的な物体よりも、行動や態度、倫理という目に見えないものに表れているという筆者らの主張が、常に感じられる内容でした。後に続いていく章を読み進めていくにあたって、本章で扱った「機械的客観性」が「客観性」全体の議論にどのように関わっていくかが気になります。【S】
《後半》担当した3章後半では、客観的な視覚というものが、自動化ないし機械化によって特徴づけられる技法の習得と、自己監視という規律化の二つによって構成されるということが論じられました。機械化と自動化の関連についてはもう少し考える必要がありそうですし、19世紀当時の機械(マシン)やその時代背景について自分でも調べてみたいなと思いました。【澤井】