2022年10月6日

演習(大学院ゼミ)の記録

【書評紹介】

Yanai Toister, Photography from the Turin Shroud to the Turing Machine. Bristol and Chicago: Intellect, 2020.

Review by Thomas H. Conner, Technology and Culture 63 (2022): 912-913.

本書では写真作品を制作する芸術家でもある著者によって視覚文化に関する現代思想、特にデジタル時代における写真のあり方や意味について論じられています。評者によると、主に哲学者ヴィレム・フルッサーの画像見解が説明されたうえで、現在そして将来におけるメディアに関する議論に結びつけられているとあります。当たり前に存在する写真を問い直す指標になると同時に、個人的には著者の写真作品にも非常に興味をもちました。【松山】

【論文分析(2件)】

金凡性「地震はいつ起こるのか:大森房吉(1868-1923)と「気象学的地震学」」『科学史研究』第42 巻(2003年),11-19頁.

今回は、自身の博論のテーマに沿って、「気象学的地震学」という視点から明治~昭和初期の日本の地震学について新たな側面を理解することを課題とした論文について報告しました。ゼミの議論を通して、特に地震予知を「地震はいつ起こるのか」と言い換えられているところなど、ダイレクトに書いていなくてもこの論文で問題にしようとしていることの中心がどこにあるのかを伝える手法があることを知りました。内容は既に知っていたものでしたが、今回の報告で著者の主張することにより接近できたようでよかったです。【菱木】

伊勢田哲治「ウィッグ史観は許容不可能か」『NAGOYA JOURNAL OF PHILOSOPHY』第10巻(2013年),4-24頁.

本論文はホイッグ史観の概念史をたどりながら、妥当なタイプとその文脈への適合性を探る議論だった。本論文の貢献は、概念の起源からその批判・擁護の議論をサーベイしたうえで、ホイッグ史観ないしは現在主義を明晰に分類したことにある。これによって概念の利用・評価などの応用につながる。一方で概念史に偏ってしまっているため、ホイッグ史観じたいについての近年の議論は十分にサーベイできているのかは疑問である。これによって本論文での主張が新規性のあるものなのか判断することが難しくなっている。【佐々木】