2023年5月8日

演習(大学院ゼミ)の記録

【専門書講読】

金山浩司「武谷三男論──科学主義の淵源」
『昭和後期の科学思想史』(勁草書房、2016年)第1章)

本稿では、武谷三男の科学論(三段階論)及び技術論(意識的適用説)の理論構造を分析することによって、それらに通底する武谷の根本的態度(模写説)が明らかにされました。合わせて、これまでの武谷の理解のされかたに対する著者の見解がいくつかの論点で示されていたことも、非常に勉強になりました。自分の研究内容に関連することとしては、科学主義的態度が必ずしも武谷のような原発導入慎重論には繋がらない、という点に気付けたことは、今後の研究のまとめ方に活かせると思います。【猪鼻】

【書評紹介】

Liba Taub (ed.), The Cambridge Companion to Ancient Greek and Roman Science. Cambridge: Cambridge University Press, 2020.

Review by Philippa Lang, Isis 114 (2023): 193-194.

古代ギリシア・ローマの科学の重要なテーマについての概観を目的とする本書ですが、評者によれば全13章の約半数がそれに該当する一方、残りの半数はさらに踏み込んで特定の瞬間・思想・論争の探求がなされてるといいます。本書の各章は各専門家による執筆ですが、改めて首尾一貫して展開していくことの重要性と困難さを覚えます。他方で、これまであまり焦点が当てられなかった古代の植物学や音楽などの概観は本書の有用性を示し、個人的にもそれらを含めた多くの章の内容に対して関心があります。【松山】

【研究発表】

「物理学者長岡半太郎の地震・津波研究の研究手法――1900‐1927年の学術論文・ノート類・草稿の分析から――」

今回は、東京工業大学の修士課程に在籍していた際に提出した修士論文の概要について、2021年2月に同大学で行われた修士論文発表会の資料をもとに報告しました。ゼミの皆さんからは、基本であり本質的な点から、博士論文の課題としている点まで見通された質問をいただきました。詳細な内容についてはここでは言及を控えますが、修士論文提出時の時点ではベストの形として認識していたとはいえ、修士論文の一部からブラッシュアップしたものである投稿論文の発表した今改めて振り返ると、その時点での歴史研究の成果を導く力の未熟さを痛感させられたように思います。ここから少しでも成長の幅を広げられるように、より努力しないといけないという思いを改めて強くできた機会をいただけてよかったです。【菱木】