2023年5月15日

演習(大学院ゼミ)の記録

【専門書講読】

藤原辰史「トラクター・ルイセンコ・イタイイタイ病――吉岡金市による諸科学の統一」
『帝国日本の科学思想史』(勁草書房、2018年)第8章)

『帝国日本の科学思想史』第八章は吉岡金市という学者を紹介していました。トラクター(農業機械化)・ルイセンコ(科学思想と政治思想の批判)・イタイイタイ病(公害研究)という三つの角度から、吉岡金市の個人性格、科学思想、政治思想、成し遂げたことと欠けていたことを紹介していました。吉岡金市という人物に対する評価は難しいと思いますが、彼の「実践」の精神は、研究者に対して重要な財産だと思います。【徐】

【書評紹介】

Ole Peter Grell, Andrew Cunningham, Jon Arrizabalaga (eds.), “It All Depends on the Dose”: Poisons and Medicines in European History. New York/London: Routledge, 2018.

Frederick W. Gibbs, Poison, Medicine, and Disease in Late Medieval and Early Modern Europe. New York/London: Routledge, 2018.

Review by Wouter Klein, Isis 111 (2020): 849-851.

「毒」という物質を歴史学の文脈に落とし込み論考するという試みについて、2冊の文献を比較しながら考察する書評を紹介しました。ある一つのトピック(今回の場合は『毒』)について、歴史学的な視座、薬理学的な視座といった多くの知見によって論述されているということで、個人的には「これまで歴史学の文脈では議論されてこなかった科学的なテーマ」がどのように展開されているのか関心を持ちました。【工藤】

【研究発表】

「作者の意図はなぜ芸術解釈の問題になるのか」

今回は、芸術解釈をめぐる問題として、〈なぜ解釈の適切さを気にするのか〉と〈解釈では何が問題になるのか〉という問題を扱いました。分析美学では、芸術解釈における作者の意図の役割が取り立てて問題になりますが、その問題意識のありかを示すことに主眼を置きました。質疑では、行為/人工物の解釈はどのような方法で行われるか、作者の意図を確実に知ることはできるか、といった問いが投げかけられ、歴史哲学の問題系とのつながりを感じました。【村山】