2023年6月19日

演習(大学院ゼミ)の記録

【専門書講読】

愼蒼健「日本漢方医学における自画像の形成と展開――「昭和」漢方と科学の関係」
『昭和前期の科学思想史』(勁草書房、2011年[オンデマンド版2022年])第4章)

五十二病方を読んで以降中国古代医学に興味を持っていたのでこの第4章を選びました。この章は、西洋医学の影に追いやられた日本の漢方がいかに存在意義を主張したか、それによってどう個性を獲得していったかを、主要な漢方批判と対する反論の形成という流れで描き出しています。結果、存在意義が一新された日本漢方医学は新しい東洋医学の代名詞となり、朝鮮の伝統医学は新東洋医学に占める余地がないとされます。

最近この分野への興味を忘れていたのですが、傷寒論の話が出てきたので疼いています。【宋】

【書評紹介】

Greta LaFleur. The Natural History of Sexuality in Early America. Baltimore: Johns Hopkins University Press, 2020.

Review by Beans Velocci, Isis 113 (2022): 659-660.

本書は、性科学が成立した19世紀以前における「性の環境要因論」(当人の性的逸脱行為をその人が育った環境的・文化的特質によって説明する)が博物学の著作や大衆文学においてどのように展開されたかを論じた著作です。評者によれば、本書の重要な点は19世紀以前において人種に関する言説と性に関する言説が切り離せないことを指摘したことにあります。本書は必ずしも科学史プロパーが主要な読者として想定されているわけではありませんが、クィア・スタディーズとの接近を考える上で科学史側にも大きな意義がある著作であると思いました。【滝澤】

【研究発表】

「議事録から見る気候変動政策の形成過程(への予備的分析)」

修士論文に向けて、現在進めている分析作業について、手続き・内容とあわせて発表を行いました。ゼミ生からは、手法についての基本的な点にはじまり、現状の自分が気付いていなかった問題点について数多くの質問をいただきました。審議会の性格の整理など、今回のゼミで提出された論点も踏まえながら、今後の研究を進展させていければ、と思います。【N】