2023年10月2日

演習(大学院ゼミ)の記録

【論文分析】

Alan J. Rocke, “Origins and Spread of the “Giessen Model” in University Science,” Ambix 50 (2003): 90-115.

本論文は、19世紀のドイツでリービッヒが開始した教育法「ギーセン・モデル」の起源と普及について、従来検討されてこなかった三つの要素(異性体の発見・化学式・カリ球)から説明し、そのフランスやアメリカへの普及を検討しています。

私が19世紀のカールスルーエ化学者国際会議を研究しているので、特に本論文で論じられている、リービッヒの提案した実験室ベースの教育法と化学者コミュニティ形成に関する内容は非常に興味深く読みました(国際会議の主催者ウルツはリービッヒに倣ってラボを持ち、化学者集団を作った中心人物でした)。修士論文の執筆にも活かしていけたらと思います。【澤井】

【書評紹介】

Helge Kragh. Niels Bohr and the Quantum Atom: The Bohr Model of Atomic Structures, 1913-1925. Oxford: Oxford University Press, 2012.

Review by Michael Janssen, Isis 108 (2017): 219-220.
本書は1913年のボーアによる一連の論文における水素原子モデルの提示をハイライトとする、前期量子論の誕生、展開、衰退の歴史を豊富な一次資料から描いたものです。地域、分野、学派間での原子モデルへのアプローチの違いを丁寧に追っていることが本書の特徴の一つです。磁性論の歴史を追っている者としては、物体の磁性を説明する上での古典論の限界を示したボーアの博士論文について論じられている(らしい)本書を、いつか参照する機会が来るのではないかと思っています。【滝澤】

【研究発表】

「第1回応用力学連合講演会(1951年)における今井功の流体力学」

教員がいま進めている研究について紹介する目的で、9月の物理学会で発表した内容をそのまま報告しました。まだ始めたばかりのテーマで、最初の進捗報告という程度の内容でしたが、ゼミ生の皆さんからも質問を受けることができたのは、今後のモチベーションになると思います。【有賀】