2023年12月11日

演習(大学院ゼミ)の記録

【論文分析】

槙野佳奈子「科学普及活動家ルイ・フィギエと死後の魂をめぐる問題」『科学史研究』第59巻(2020年),99-112頁.

今回は科学史研究の槙野佳奈子「科学普及活動家ルイ・フィギエと死後の魂をめぐる問題」を論文分析しました。フィギエの『死の明くる日』という著作を中心にフィギエの目的意識の変化や科学普及活動家としての立場などを考え、従来のこの著作の評価を再考するものでした。

人々の幸福のため理系と文系を混ぜた考え方を提示するフィギエの姿勢が自分のやりたいことと近い気がしたのでこちらの論文を選びました。意図せず論文賞を取った論文を選べたので*、構成を分析するのに良いものを分析する機会が得られたと思いました。【西原】

*有賀注:この論文は第17回(2022年度)日本科学史学会論文賞を受賞している。

【書評紹介】

Daniel D. Garcia-Swartz and Martin Campbell-Kelly, Cellular: An Economic and Business History of the International Mobile-Phone Industry. Cambridge, MA: MIT Press, 2022.

Review by Noah Arceneaux, Technology and Culture 64 (2023): 1005-1007.

1980年代から2020年までの携帯電話の歴史についての本を紹介しました。経済を中心とし、携帯を使用する文化にも触れながら、体系的にまとめられている点が良いと思い、興味を持ちました。

また、書評自体も本書について分かりやすくまとめられていて、評者からのコメントとの分量もバランスが取れており、参考にしたい文章構成だと思いました。【S】

【研究発表】

「ヴェーバーの磁性論形成過程における『電気力学的単位決定』の意義」

ヴェーバーの磁性論形成過程における『電気力学的単位決定』(Elektrodynamische Maassbestimmungen)(1846)の意義についての研究発表を行いました。1830年代の地磁気研究期には見られなかった新たな態度、すなわちラプラス流の磁気理論とアンペール流の磁気理論の等価性を認める態度が初めて現れたことが、後にアンペールの考えにもとづいて磁性論を展開する上での重要な契機である、というのが本発表の趣旨です。発表後には、広い意味での電磁気学の歴史におけるヴェーバーの位置づけなどについての質問をいただきました。1846年以降の史料の調査、論点のさらなるブラッシュアップが今後の課題であると痛感しました。【滝澤】