2023年12月18日

演習(大学院ゼミ)の記録

【論文分析】

Sean F. Johnston, “Making the Invisible Engineer Visible: DuPont and the Recognition of Nuclear Expertise,” Technology and Culture 52 (2011): 548-573.

本日は、戦後アメリカにおける原子力工学者の台頭を、化学工学企業であるデュポンに着目して描いた論文を紹介しました。デュポンは、マンハッタン計画からプルトニウム生産プロジェクトに組み込まれ、実験規模から産業規模へと反応炉を改築していく過程で、科学者と技術者の間のヒエラルキーが変化していったことが、当事者の日記などの一次資料を基に記述されました。日本では原子炉といえば発電用が想定されることが多いと思いますが、その源流(シカゴ・パイル)はプルトニウム生産炉であったことに改めて気付かされ、その応用化学的実践から原子力工学者が台頭してきたというストーリーは非常に興味深いものでした。日本の場合はどのようになるのか、今後の研究で明らかにしていきたいと思いました。【猪鼻】

【書評紹介】

Tomáš Nigrin, The Rise and Decline of Communist Czechoslovakia’s Railway Sector. Budapest: CEU Press, 2022.

Review by Michal Ďurčo, Technology and Culture 64 (2023): 956-958.

社会主義体制期チェコスロヴァキアの鉄道部門の歴史を扱った基本書で、チェコ語で出版された単行本の訳書です。国営交通システムを通して社会主義国家特有の中央計画経済の失敗を検証しているとあります。評者は、本書を経済史・政治史・テクノロジーの文化史として分類し、歴史学において鉄道に着目したことを評価しています。その一方で、著者が当時の事象を現在の市場経済の観点から判断しすぎていると注意をはらっています。冷戦下において鉄道外交を行っていたそうで、個人的にも興味がつきません。【松山】

【研究発表】

「鍾呂伝道集の自然観」

鍾呂伝道集という錬丹術書に見られる内丹思想の自然観が、それまでの外丹の自然観とどう違っているかを研究テーマとしました。錬丹術の解説書などを参考にしながら原文を読み進め、その自然観を科学史の観点から明らかにできればと思います。【宋】