2024年4月22日

演習(大学院ゼミ)の記録

【専門書講読】

村田純一『技術の哲学:古代ギリシャから現代まで』(講談社学術文庫)講談社、2023年.

序章 なぜ、現在、技術は哲学の根本問題となるのだろうか?

[記事は省略;教員による簡単な説明をおこないました。]

第1章 人間にとって技術とは何か――プロメテウス神話と哲学的人間学

本章では、人間と技術の関係を考える際の背景として、プロメテウス神話が取り上げられています。具体的には、まず20世紀前半のプレスナーやゲーレンといった哲学者による技術の人間学について説明したのち、著者はその萌芽をアイスキュロスやヘシオドス、プラトンらによるプロメテウス神話の中に見出せるとしています。プロメテウス神話にも通ずる「人間はその本性において技術的製作を繰り返す」という見解は、消費社会に生きる自分にとってやや想像しにくいものでした。現代において個人が技術的製作を行うとは何を意味するのか、本書を通じて考えていけたらと思います。【澤井】

【書評紹介】

Bernard Dionysius Geoghegan, Code: From Information Theory to French Theory. Durham, N.C./London: Duke University Press, 2023.

Review by Libby O’Neil, Isis 114 (2023): 887-888.

本書は、戦間期アメリカにおける情報科学と人間科学の形成から戦後フランスにおける所謂「フレンチ・セオリー」の形成までをテクノクラート文化という観点から分析したものです。サイバネティクスの起源における軍事的要因よりも、テクノクラートによる慈善活動という福祉的要因を強調する本書によって、コンピューティングの標準的な歴史語りはある種の挑戦を受けることになるでしょう。200頁足らずの本書を読むためには情報科学から現代思想までの幅広い前提知識を必要としますが、仮に邦訳された際にはぜひとも一読したいと思います。【滝澤】

【その他】

「科学史研究入門ガイド」および「科学技術史分野における博士号取得の考え方」の2点の資料を配布し、教員による説明をおこないました。【有賀】