2024年5月2日

演習(大学院ゼミ)の記録

【専門書講読】

村田純一『技術の哲学:古代ギリシャから現代まで』(講談社学術文庫)講談社、2023年.

第2章 宇宙の秩序に従って生きる――プラトンと価値の問題
第3章 自然の模倣――古代:アリストテレス

第2章と第3章では技術に関するプラトンとアリストテレスの思想がそれぞれ扱われていて、ゼミではこのうち後者を主に報告しました。本書で「アリストテレスの技術論」とされているものは、よく読むと、『動物部分論』『自然学』『ニコマコス倫理学』の記述を並べたものになっています。しかし、アリストテレスの技術哲学なるものが仮にあるとすれば、これら(および他のテクスト)をもっと深いレベルで総合し、書かれていないことを埋めていくような作業が必要になりそうに思います。また、アリストテレスの技術論は「自然の模倣」として知られているとのことですが、『自然学』でこれが述べられている箇所にはまた、技術は「自然がなしとげえないところの物事を完成させ」るともあります。この部分はアリストテレスの受容の過程でどうなったのだろうかという疑問を持ちました。【有賀】

【書評紹介】

Huang Na, Building Chinese Braille with Chinese Characteristics. China Society Press, 1999.

Review by Cong Cai and Di Wu, Technology and Culture 65 (2024): 414-416.

この本は、中国の点字の父と呼ばれる黄乃先生の著書です。1999年に出版された本のため、詳細な情報を入手できません。書評によれば、この本には中国の点字の開発と修正しようとした過程が記されています。中国の言語と文字研究や点字技術史研究にとって重要な一次資料です。今後、帰国の際には機会があれば、中古市場で購入し、読んでみるつもりです。【徐】

【研究発表】

「内丹の成立について」

外丹の内丹への移植はなぜ起きたのかについて、陰陽五行説の伝統とその抽象的性質が、鉛と水銀という対象から心臓と腎臓への注目をもたらした一因となったのではないか、という仮説を提示しました。その検証のため、代表的な内丹術書である「悟真篇」や『鍾呂伝道集』を読解し、内丹そのものの理解を深めることを第一の目標に設定しました。指摘があった通り、これだけを読んで移植の過程が明らかになるとは限らないので、先行研究を頼りに、また道教の自然観をキーワードにして、時代・文献を探っていきたいと思います。【宋】