演習(大学院ゼミ)の記録
【専門書講読】
村田純一『技術の哲学:古代ギリシャから現代まで』(講談社学術文庫)講談社、2023年.
第6章 科学革命――近代科学の成立と技術の役割
第7章 イデオロギーとしての科学と技術――近代のパラドックス
第六章と第七章では、科学と技術の関係について議論されました。ここでは、抽象的数理を重視する「思考法の革命」と、技術的に作られた実験の科学的な意味を重視する「実験法の革命」という二つの脈絡があり、これらが共に近代科学革命を形作ったと考えます。また、科学革命の意味は多様であり、具体的な歴史の文脈と結びつけて考察する必要があると認識しました。第七章では、著者が科学と技術の区別におけるイデオロギー性について論じましたが、そもそも「イデオロギー」とは何かという疑問が浮かびました。さらに、科学と技術を区別すればするほど両者がハイブリッド化するという「近代のパラドックス」に直面する際、著者は両者の関係を究明するよりも、どのように相互作用しているのか、どのように峻別されたのかを問うべきだと指摘しました。私の考えとしては、科学と技術は二元対立の関係ではなく、むしろ歴史の中で相互に影響し合い、促進し合う関係だと思います。【徐】
【書評紹介】
永田大輔ほか『ビデオのメディア論』(青弓社ライブラリー)青弓社、2022年。
本書は「ビデオ」というメディアの誕生、言葉としての意味の変化やまだ一般家庭に普及していなかった1960年代から急激に家庭に普及した90年代までの期間を中心に様々な角度から「ビデオ」の歴史を論じた。
また、著者は「レンタルビデオ店」というビデオ時代の代表格とも言える存在に着目し、「データベースのような図書館」まで至る空間変化の過程を緻密に論述した。ビデオを始めとするアナログなメディアは一般人の日常生活いかに浸透したか、また如何なる変化を齎したか、著者の考察によって知ることができた。今のようなデジタルメディアが主流となった時代、またその先の人々は映像に対する欲求を見据える時に本書は重要な参考系であり、自分の研究にも活用するつもりです。【李】
【研究発表】
「『ボボボーボ・ボーボボ』のうつ」
発表では現在のギャグマンガの研究の不足と『ボボボーボ・ボーボボ』という作品の研究が正確にされてこなかったのではないかということを指摘し、現在までのギャグマンガの系譜と『ボーボボ』の歴史を確認しました。そして、先行研究に異議を立てるとともに、『ボーボボ』の特徴にはうつ要素が関係あるのではないかと仮説を立て、他のギャグマンガにそのような傾向がなかったか調べることとと『ボーボボ』のうつ要素の実証を進めていく予定であることを述べました。【西原】