2024年5月27日

演習(大学院ゼミ)の記録

【専門書講読】

村田純一『技術の哲学:古代ギリシャから現代まで』(講談社学術文庫)講談社、2023年.

第9章 技術と社会――技術決定論から社会構成主義へ
第10章 技術の解釈学――変革可能性のために

第9章では社会構成主義が論じられました。技術と社会を独立したものと考える決定論とは異なり、社会構成主義では具体的な分析を通して技術と社会が内的に作用しあう関係であることが導かれます。そしてその相互作用の形は技術と社会の二重側面であり、どちらの側からみるかにより相対的にどちらかの決定論的な観点が際立つと筆者は述べます。その上で第10章では技術の解釈学と称し、自明化している技術の解釈を改めて検討することで既存の技術の変革可能性があることが示されました。工場法やボイラー規制により技術的合理性の価値判断自体が変革した例では、政治経済と深く結びつく時代における技術と「社会」の関係を検討する必要を感じました。【神村】

【書評紹介】

Robert Fox, The Savant and the State: Science and Cultural Politics in Nineteenth-Century France. Baltimore: Johns Hopkins University Press, 2012.

Review by Alex Csiszar, The Journal of Modern History 86 (2014): 693-694.

本書は、第一帝政の終わりから第一次世界大戦勃発までの期間を対象に、19世紀フランスの科学事業が果たした政治的・文化的な側面を総合的に記述したものです。評者は本書の特徴として、パリの外およびパリ科学アカデミーの外の科学生活に焦点を当てている点、博物館や標本、科学機器など幅広い文化を扱っている点などを挙げています。私は19世紀の国際会議や、最近では万博にも関心を寄せていますが、これらもまさに公的な科学事業であり、その社会的背景などを考える上で本書は必読です。自分の研究に活かせるよう、引き続き読み進めたいと思います。【澤井】

【研究発表】

「インターネットにおける中国科学コミュニケーションの現状」

修士論文に関する最近の状況をゼミで発表しました。前回の発表から数ヶ月が経過しましたが、研究の方向を「専門家への信頼」から「中国における科学コミュニケーションの現状」へと変更しました。今回のゼミでは、主に中国の科学コミュニケーションの歴史と理論、ならびに研究方法について紹介しました。発表の中で、インターネットにおける科学コミュニケーションの特徴を論じる際に「非人格性」という言葉を使用しました。この言葉の適切性について皆さんの意見を伺うことができ、とても参考になりました。また、今後は中国語の影響を受けた日本語表現に注意を払う必要があると認識しました。【徐】