2024年6月3日

演習(大学院ゼミ)の記録

【専門書講読】

D.R. ヘッドリク『進歩の触手:帝国主義時代の技術移転』(原田勝正ほか訳)日本経済評論社、2005年.

第1章 帝国主義、技術および熱帯経済
第11章 技術移転と植民地の政治

ヘッドリク『進歩の触手』第1章と第11章をやりました。技術史の観点から新帝国主義が植民地の工業化をもたらさなかった原因を考えるのがおもしろいと感じました。もっとも科学史の界隈では典型的な観点だそうですが。また著者の帝国主義の捉え方が印象に残りました。何をもって帝国主義とするかは多様な見方かありますが、著者のいう「新帝国主義」に対する旧帝国主義を何とみなすかは、当時の学説に通じない限り、それまでの侵略的・対外膨張的主義主張一般を指すとすることはできない気がしました。【宋】

【書評紹介】

Michael S. Reidy, Tides of History: Ocean Science and Her Majesty’s Navy. Chicago: University of Chicago Press,
2008.

Review by Helen Rozwadowski, Oceanography 22 (2009): 240-241.

今回の著書は現在執筆中の紀要論文の参考として選びました。書評を通して、本書のタイトルで表現していること以上に、著者が潮汐研究を19世紀の科学のインターナルな展開における貢献として位置付けようとしていたことに着目でき、本書の魅力をより知ることができました。

書評は、科学史だけでなく「海洋史」・環境史も専門とする評者による書評を選んでみたものでした。今日的な視点からの「評価」も拭えないものではありましたが、むしろその視点だからこその読み方とその背景にある評者の学問観が垣間見えるようで興味深かったです。【菱木】

【研究発表】

「W. E. ヴェーバーの磁気理論の形成過程」

5月25日(土)の日本科学史学会年会で行った発表をもとに、これからの研究計画についても報告させていただきました。「ヴェーバーの磁気理論の受容を問う」というこれからのリサーチ・クエスチョンに対して当初はヴェーバーの反磁性研究のその後の展開の追跡、ヴェーバーからマクスウェルへの磁気理論受容の経緯を探るという二つのアプローチを想定していましたが、この二つのアプローチがそもそもリサーチ・クエスチョンに合致しているのか、また「受容」という用語が適切かどうか、などについて質問をいただきました。修士論文の提出まで半年ほどですが、史料の読解と論点のブラッシュアップに励みたいと思います。【滝澤】