演習(大学院ゼミ)の記録
【専門書講読】
D.R. ヘッドリク『進歩の触手:帝国主義時代の技術移転』(原田勝正ほか訳)日本経済評論社、2005年.
第7章 実用植物学と熱帯プランテーション
ヘッドリク『進歩の触手』第7章 実用植物学とプランテーションを担当しました。内容は熱帯輸出作物にいかに科学が用いられたかを研究することで、プランテーション農業と実用植物学との関連を制度(主に植物園と国の政策)と作物(キナノキ、サトウキビ、ゴム)に着目して検討するというものでした。
ややうまく読み取れなかったところがありましたが、歴史的事実とそれに関わる実用植物学(科学?)が絡み付いた文章で、単に知らなかった事実を知ることができる文章として面白いと感じるところがありました。ですがそれとともに、どの部分を「科学」としているのかいまいちピンとこない面もありました。【西原】
【書評紹介】
Arne Kaijser, Markku Lehtonen, Jan-Henrik Meyer and Mar Rubio-Varas eds., Engaging the Atom: The History of Nuclear Energy and Society in Europe from the 1950s to the Present. Morgantown: West Virginia University Press, 2021.
Review by Laura Ciglioni, Technology and Culture 64 (2023): 987-88.
本日紹介した本は、スペイン、ブルガリア、フィンランド、ギリシャといったヨーロッパ諸国における、1950年代の冷戦期から現代にいたるまでの原子力政策の展開を、国内的関係・国際的関係の両面から分析した論文集とのことです。原子力技術に関しては、民衆参加が起こったことで「公共技術(public technology)」との特徴づけがなされ、おそらく、そのような参加形態が代表民主制を代替するようなものであることから、「参加論的転回(participatory turn)」ということが言われているようです。ヨーロッパでの動向をこのようにまとめてもらっているのは読者としては非常にありがたいので、ぜひ読みたいと思います。【猪鼻】
【研究発表】
「明治~昭和初期におけるピアノ技術者の〈学び合い〉」
博士論文に向けて研究の背景やこれまでの成果、現在の取り組みについて発表しました。有賀ゼミにて初めての発表であり様々な質問を頂くことができました。技術者という言葉の幅の広さをどのように整理していくか、楽器そのものの構造解説から技術へどのように結びつけて記述すべきか、そして海外で学んだ技術者の行き先の整理と業界に与えた影響などをより深く検討する必要を感じました。【神村】