演習(大学院ゼミ)の記録
【専門書講読】
村田純一『技術の哲学:古代ギリシャから現代まで』(講談社学術文庫)講談社、2023年.
第8章 技術は科学の応用か――知識論の「技術論的」転回
第13章 技術との新たな付きあい方を求めて――J・デューイとH・ヨナス
※レジュメは第13章について作成
『技術の哲学』の第13章では、現代における技術へのアプローチは倫理という言葉が多くしめ、哲学との対比を強調しています。その中でもJ・デューイ とH・ヨナスの2人に焦点を当て論じられています。応用倫理の「応用」という語に着目し、実際の問題解決のために倫理を道具として応用することがデューイが主張するプラグマティズムにおいての解釈では考え直す必要があると論じられています。また、ヨナスは倫理に対して「謙遜」「保存」を強調し、人間を初め多くの生物へ多大な影響を及ぼす技術に対しての生命倫理が特徴である一方、デューイは成長の意義を主張し、一見異なる意見に取れるが、著者は「文脈主義」という姿勢をとることでデューイとヨナスは矛盾しないと論じ、結論づけています。応用倫理がくを語から問い直すという手法は非常に思考に幅を持たせ、新たな知見を得られると再認識できました。【松山】
【書評紹介】
Jonathan E. Abel, The New Real: Media and Mimesis in Japan from Stereographs to Emoji. Minneapolis: University of Minnesota Press, 2022.
Review by Jamie Coates, Technology and Culture 65 (2024): 412-414.
今回取り扱ったのはJonathan E Abel のThe New RealをJamie Coatesが書評を行なったものです。2024年『Technology and Culture』vol.65に載ったもので、日本のメディア研究や事例を取り入れながら模倣という概念を媒介のメタファーとして捉え直すことを主張している本であると述べられています。評者はこの本をやや肯定的に評しており、本の中のケーススタディは教育に向いているのではないかとしています。
現在日本について雑誌に載るとなるとこのような内容になるのかという関心があるとともに、書評が曖昧なこともあって実際のケーススタディの良さ等は直接本にアクセスしてみなければわからなそうでした。【西原】
【研究発表】
「画像生成技術による美術製作における知性の変化:ゲーム原画家の作業からの分析」
修論研究計画の発表を行いました。本研究は、ゲーム原画家を対象に、画像生成技術が彼らの作業と仕事に与える影響を分析します。特に、AI技術が美術製作における「知性」をどのように代替し、原画家とどのように共存するかを明らかにします。発表中に、AI技術の進展が芸術と文化に与える多面的な影響を再確認しました。皆さんとの議論を通じて、AI技術を新たな「知性」として捉える視点が得られました。また、歴史上の他の芸術文化変革と比較することなどの意見も、非常に勉強になりました。
次のステップとして、夏季休暇中に原画家へのインタビューを実施し、具体的なデータ収集を進めます。【王】