力学史勉強会で題材としているテクストの試訳を掲載しています。載せているのは勉強会で進んだところまでです。訳文は随時、断りなく修正することがあります。
- 【原典】Leonhard Euler, “Découverte d’un nouveau principe de Mecanique.” Histoire de l’Academie Royale des Sciences et des Belles-Lettres de Berlin pour l’anné 1750 (pub. 1752), Mémoires, pp. 185–217.
《2022年4月19日開催分》
力学の新しい原理の発見
1. 全体としてはどのような運動を取りうるにしても、内部がいかなる変化にも応じない物体、すなわちすべての部分が互いに対して常に同じ位置関係を保つ物体は、固体と呼ばれる。この堅牢にして不変な部分間の結合にもかかわらず、固体は無限に多くの異なる運動を受け入れることができるのであって、それを求めることと、その際に順守される法則とが、力学あるいは動力学の対象である。そしてこのことによって、この科学は、流体の運動の研究にもっぱら関わる流体動力学あるいは水力学から区別される。流体では、各部分が別々に運動を持ちうるような仕方で、すべての部分が互いに自由になっているのである。これら二種類の物体のあいだには中間的なものを構成することができ、この中には、形状が無限に変化可能な、変形する物体が含まれる。しかしこの物体の運動の考察は容易に力学へと還元され、同じ諸原理によって展開できるため、この科学において問題となるのは固体に関する運動の法則のみである。
《2022年5月17日開催分》
2. 固体が受け入れることのできる無数の運動の中で、考察せねばならない第一のものは、すべての部分が絶対空間の同じ諸点に絶えず向いたままであるようなものである。つまり、物体の任意の二点を通って引かれた直線を思い浮かべるなら、この線はいつでも同じ方向を保つだろう。あるいは、同じことになるが、いつまでも自分自身と平行であり続けるだろう。このような運動は純粋な並進運動と呼ばれ、その特性は、各瞬間には物体の諸部分が等しい速度で同じ方向に運動するということにある。そうすると、ある物体が純粋な並進運動によって運動しているときには、物体全体の運動を把握するためには、その諸要素のうちただ一つのものの運動、つまりはその要素が各地点での速度でもって通過する道程が知られれば十分である。
3. ところが物体は、固体であるとは言っても、その他の無数の運動を受け入れることができる。なぜなら、物体の一つの点が不動のままでありつつ、物体全体がこの点の周りに回転するということが起こりうるからである。そして明らかに、この場合にはこの物体の異なる点の速度はもはや同じでなく、かつ物体の異なる部分によって運動の方向は異なるであろう。だがそれにもかかわらず、この物体の一つの点が静止し続けているあいだになされる別のただ一つの点の運動が知られれば、物体のほかの点すべての運動を同じ瞬間について求めることができるだろう。なぜなら、この物体は固体であるので、すべての点はその二つの点、一つは静止しておりもう一つは運動が知られている二点に関して、いつでも同じ位置関係を保たねばならないからである。この回転運動はまた、純粋な並進運動に付け加わることができ、そこから我々が地球について観察しているような混合運動が生じてくる。地球のすべての部分は、速度についても方向に関しても、各部分の運動がほかのどの運動とも異なるように運動しているのである。
4. しかし回転運動は無限に多様でありうるので、これまで力学においてはただ一つの種類のものしか考察されてこなかった。ほかのものを計算に帰着させるのに十分な原理を欠いていたのである。この[ただ一つの]種類に含まれているのは、この物体が不変な軸の周りに回転するか、もしくは自分自身に常に並行であり続ける軸の周りに回転する、という場合である。なぜなら、後者の場合には物体の運動を二つに分解できるからである。一つは純粋な並進運動であり、もう一つはいつでも同じ方向を保っている固定軸の周りになされる。実際このようにして地球の運動は表現される。それを分解して、年周運動[公転]と日周運動[自転]にすることによってである。前者は純粋な並進運動と見なされ、後者は地軸の周りになされるが、この軸は絶えず天の同じ諸点を向いていると見なされる。なお分点の歳差と地軸の章動については捨象している。
《2022年6月21日開催分》
5. 固体の運動がどのように合成されているのであれ、並進運動と回転運動に分解することはいつでも可能である。前者は物体の重心の運動によって見積もられ、またこの運動は他方の回転運動から分離して、独立に考察することがいつでも許される。この状況が我々に与える利点は、逆に、回転運動を並進運動(もしそれがあるとして)とは独立に考察できるということである。すなわち、あたかも物体が並進運動をまったく持たないかのようにして回転運動の探究に取り組むことができる。このためには、頭の中で、物体が存在する空間に、物体の重心の運動と等しくかつ逆向きの並進運動を加えるだけでよく、この手段によって、物体がどのような回転運動を持ちようとも重心は静止し続けるという場合が手に入るだろう。
6. それゆえ、固体に対して最初にどのような運動が与えられ、続いてどのような力が働くにしても、各瞬間におけるその運動を求めるには、その物体をあたかも全質量が重心に集められたかのように見なすことからまず始め、その上で、既知の力学の諸原理によって、働いている力により生み出されるこの点の運動を求めることになるだろう。すなわちこれが物体の並進運動ということになるだろう。その後で、この並進運動を脇にどけておき、同じ物体を、あたかも重心が不動であるかのように見なすことにしよう。これは回転運動を求めるためであり、最初に与えられた[回転]運動と、続いてそれを変化させることになる力の双方を考慮する。そしてこの探究の終点に辿り着いたなら、別々に見出されたこれら二つの運動を一つに結び付けることによって、物体が運ばれる真の運動を各瞬間について割り当てることができるだろう。
7. それゆえ任意の固体の重心が静止していると考えてみると、それでもなおこの物体は無限に多様な運動を受け入れられるだろう。ところで以下で示すように、そうした物体の運動がどのようなものであれ、各瞬間について静止しているのは重心だけではない。重心を通る一つの直線上に位置する無数の点であって、そのすべてが同じく運動していないようなものもまた、常に存在するだろう。つまり、物体の運動が何であるにせよ、各瞬間において、重心を通る一つの軸のまわりになされる回転運動が存在するだろう。そしてこの運動において起こりうる多様性の全体は、速度の多様性に加えて、物体が各瞬間に自転するこの軸の可変性に依存するだろう。すなわち、問題は次のことを探究することに帰着する。物体がたえず同じ軸の周りに回転し、したがってその軸が不変となるのか、それとも回転軸が自らの位置関係[向き]を変え、結果として物体が重心を通る異なった線の周りで順次回転するのかである。
8. ここで、固体が受け入れることのできるこうした回転運動の決定において今までにどれだけの進展があったかを示すにあたり、私が注意しておきたいのは、現在までに打ち立てられてきた力学の諸原理は、回転運動が連続して同じ軸の周りでなされる場合についてしか十分でないということである。それゆえ[言い換えると]、この軸の端を物体の極と名付けることができるのだから、それは物体の両極が重心と同様たえず静止し続けるという場合である。ところが、回転軸がもはや同じままでなく、物体が自転する極そのものが変化するとその途端に、今まで知られている力学の諸原理は、この運動を求めるにはもはや十分でなくなってしまう。それゆえ、この構想に適した新しい原理を見出し、打ち立てることが問題となる。この探究がこの論文の主題であり、長い時間をかけて無駄に終わった多くの試みのあとで、私はついにその終点に辿りついた。
《2022年7月26日開催分》
9. しかしこの探究に入る前に、どのような状況であれば力学の既知の諸原理が首尾よく用いられうるかをよりよく判断できるようにするために、固体が重心を通る不動な軸のまわりに回転できる場合というのをより正確に決定しておくのが適切だろう。そこからは同時に、ほかのあらゆる場合にこれらの原理がもはや十分でなく、私がここで探求しようと企図している新しい諸原理に頼らねばならないことが認識されるだろう。ところで、ある物体が不動な軸のまわりに回転できるかどうかを判断するには、物体そのものの構成と、それが受ける力とをともに考慮しなければならない。というのも、その物体に作用する力がまったく存在しないときであっても、物体が任意の軸のまわりに回転を始めるやいなや、微小部分【particule】の各々がその遠心力によって押されることになるからであって、この不動な軸のまわりで運動が持続しうるのは、すべての遠心力が互いに打ち消しあうときだけなのである。
10. そこで、不動な軸Aaのまわりに自由に回転する任意の固体があるとし、軸はその重心Oを通っているものとする。私はこの軸Aaを、重心Oがその中にあるような板面【? plan de la planche】に垂直であると見なし、さらにこの平面内に、互いに直交し第一の軸AOaとも直交するもう二つの軸BObとCocを思い描く。そして、まさにこれら三つの軸と関連付けることによって、任意の瞬間に対する物体の各要素の位置を決定することにする。というのも、これら二つの別の軸BObとCOcは、物体を通っている限り、第一の軸AOa――これは回転軸であり、仮定により不動のままである――のまわりに物体と一緒に回転することになるからである。ゆえに軸OCのうちの点Cは回転運動によって、平面BOC上のOに中心をもつ円弧Cγを動くだろう。そしてもし我々が距離OCをfとおき、点Cの高さによる速度をvとおくなら――したがって速度そのものは√vで表されるだろう――物体のほかのすべての点の速度はどこにおいても、軸からの距離AOaに対して√v対fの比になるだろう。つまり、√v/fはどこにおいても、角速度【vitesse angulaire】と呼ばれるもの、すなわち回転の速度を表示するだろう。
11. このようにおいたところで、Zを物体の任意の要素とし、物体全体の質量はMであるとして、その質量がdMで示されるとする。この点Zから平面BOCに垂線ZYを引き――これは回転軸AOaと平行になるだろう――また点YからOCに垂線YXを引くとする。さらに[長さ]OX=x, XY=y, YZ=zと名付けると、これらは三つの直交座標となり、それらによって点Zの場所が決定される。直線ZV[原文はZYとなっているが誤りと思われる]は回転軸AOに垂直であるとすると、これは直線YOと平行で長さが等しくなり、したがってまたOV=YZ=zとなるだろう。ゆえに点Zから回転軸までの距離は ZV=OY=√(xx+yy) となり、ここから、点Zが軸AOのまわりに回転するであろう速度は距離√(xx+yy)に対して√v対fの比になるだろう。したがって点Zの速度は√v(xx+yy)/fとなり、この速度による高さはv(xx+yy)/ffであろう。
《2022年11月14日開催分》
12. ここから、要素Z = dmの遠心力は {2v(xx+yy)/ff}*{dM/√(xx+yy)} = {2vdM/ff}√(xx+yy) となることが帰結する。ここでdMは、この要素が地球周辺で持つであろう重さを表す。ゆえに、要素Zが軸AOからVZの向きに離れようとするのはこの力によるのであり、したがってこの力の効果は、回転軸が点VにおいてVAの向きに {2vdM/ff}√(xx+yy) に等しい力を受けたときと同じだろう。ゆえに、回転軸AOaに作用する類似の力が物体の各要素から生じるのだから、それにもかかわらず[回転軸が]不動のままであるためには、これらすべての力が互いに打ち消しあわねばならない。というのもこれが起こらない限り、回転軸は不動のままであり続けられず、むしろ、自由であると想定されているので、合力に屈してしまい、すでに確立されている力学の諸原理によってはもはや論じられないような場合に陥ってしまうであろうということは明らかだからである。
《2022年12月26日開催分》
13. これらの力VZの各々を、向きが軸OCおよびOBに平行な別の二つの力へと分解しよう。すると、VZはOY = √(xx + yy) と平行で長さが等しいのだから、回転軸OAに対してVにおいてOCと平行な向きに作用する力は […【中略】…] = 2vxdM/ff となるだろうし、OBと平行な向きの力は 2vydM/ff となるだろう。ゆえにすべての遠心力を2種類のものに帰着させると――一方は回転軸に対してOCと平行な向きに作用し、他方はOBと平行な向きに作用する――回転軸がそれらによってまったく変えられないためには、それぞれの種類の力すべてが互いに打消し合わねばならない。ゆえに第一に、一方の種類と他方の種類の力の総和が[それぞれ]消えなければならず、このことは ∫2vxdM/ff = 0 すなわち 2v/ff∫xdM = 0 および 2v/ff∫ydM = 0 を与える。つまり ∫xdM = 0 かつ ∫ydM = 0 でなければならない。ところでこの条件は、回転軸AOaが物体の重心Oを通っていると我々が仮定すると、ただちに満たされることが分かる。
14. しかしこの条件だけでは回転軸AOaを静止したまま維持するには十分でなく、これに加えて各々の種類の力のモーメントすべてが互いに打消し合わねばならない。なぜなら第一の条件は回転軸を並進運動から解放しているだけであり、いずれかの側から平面BCOのほうへ傾くのを妨げるにはこの第二の条件が必要とされるからである。ところで軸のうちの点Vに対して作用する力2vxdM/ffのモーメントは、重心Oに還元されると[?]2vxzdM/ffとなるだろうし、もう一つの種類の力それぞれのモーメントは2vyzdM/ffとなるだろう。ゆえに、回転軸が傾くのを防ぐこの第二の条件は、∫2vxzdM/ff = 0 ならびに ∫2vyzdM/ff = 0 を要求する。すなわち、現在の瞬間に対しては[?]2v/ffは定量であるから、∫xzdM = 0かつ∫yzdM = 0 でなければならない。
《2023年1月23日開催分》
15. それゆえ、固体が不動軸Aoaのまわりで自由に回転できるためには、第一にこの軸が物体の重心Oを通っていなくてはならず、さらにこれに加えて、物体を構成する物質が∫xydM = 0[正しくは∫xzdM = 0]かつ∫yzdM = 0となるようにこの軸のまわりに配置されていることが必要である。確かにこの後者の条件は、回転軸が重心を通っていても成り立たないことがありうるのが分かる。したがってその場合には、物体がそうした軸のまわりに何らかの運動を受け取ったあと、力学の既知の諸原理によって運動の続きを決定することは不可能であろう。というのもその時には、始まってすぐに回転軸が傾き、物体は各瞬間に別の軸のまわりで回転するだろうが、このことは回転運動の決定において通常用いられる諸原理の適用を不可能にするからである。
16. しかし、もし回転軸が物体の重心を通っているだけでなく、∫xzdM = 0かつ∫yzdM = 0でもあるのなら、その時には物体がこの軸のまわりでどのような回転運動を受け取ったとしても、軸が少しの変化も受けることなく、この運動が一様に続くだろう。すなわち、物体が何らかの外力によって働きかけられない限り、物体はこの不動軸のまわりを一様な運動で回転するだろう。なお、いくつかの外力が物体に対して軸の位置を乱すことなく作用することが起こりうる。これはそれらの力の中間方向[合力の向き]が平面BOC内にあって、まさしく物体の重心Oで回転軸と直交しているときである。というのもその時には、これらの力は軸BOに関してもCOに関してもまったくモーメントを持たなくなり、したがって軸そのものを変えることなく、力全体が軸AOのまわりの回転運動を加速したり減速したりすることに使われるからである。そしてまさしくこの場合には、外力によってもたらされるこうした変化を力学の既知の諸原理の助けによって決定できるのである。
《2023年2月27日開催分》
17. だが、もし物体に作用している諸力の中間方向が平面BOC内にないとすると、回転軸Aoaは不動のままでいることができず、これらの力のモーメントによって強制される側に傾くだろう。このように、今しがた説明された性質を軸が持っていたとしても、力がそれを動くものにしてしまうのであり、力学の新しい原理の発見なくしては、回転軸が不動のままでいられないというこの場合を展開していくことはできないだろう。それゆえ、示された条件が回転軸において見いだされないか、働いている力が回転軸を傾けるモーメントを含んでいるか、あるいはその両方が同時に起こるときにはその都度、変化を決定するためにこの新しい原理に頼らなければならないのである。その変化というのは回転運動[の速度]においても、物体が各瞬間にその周りを回転する軸の位置においても引き起こされるだろう。ただしこれらの変化すべてのあいだ、物体の重心は不動のままであるといつでも想定することができる。
18. ここで問題となっている諸原理は、これまで知られていなかったか、力学を論じた著者たちによって開陳されていなかったという限りにおいて新しいものではあるのだが、それにもかかわらず、これらの諸原理の基礎が新しいことはありえず、運動の学説全体がその上に打ち立てられているような第一原理、あるいはむしろ公理から、導き出されることが絶対に必要であるということは理解されよう。これらの公理は、無限に小さな物体、すなわち並進運動以外の運動を受け入れられないようなものに関係している。そしてまさにそこから、固体の運動を決定するのに用いられるものも流体の運動についてのものも、運動のほかの原理すべてが導き出されねばならないのである。つまりこれらの導出されたほかの原理というのは、物体が要素から構成されるさまざまな仕方と、物体のあらゆる部分が受け入れうる運動の多様性とに応じて、公理を適用したものであるに過ぎない。
19. 通常は、力学の公理に列せられるべきと思われるそうした原理は数多く見いだされる。というのも、それらが無限小の物体の運動に関係しているからである。だが私は、これらの原理すべてが、力学全体と何らかの物体の運動を論じるほかの諸科学との唯一の基礎と見なしうるような、ただ一つのものに還元されると注意したい。そしてまさにこの唯一の原理の上にこそ、機械学と水力学において以前から受け入れられているものであれ、固体と流体の運動を決定するために最近用いられているものであれ、まだ知られてはいないが上述の固体の事例や流体に見いだされる多くのほかの事例を展開するために我々が必要としているものであれ、あらゆるほかの原理が打ち立てられるべきなのである。なぜならこれらの場合すべてにおいて、問題となるのは、今しがた私が述べたこの基本原理をそれらに巧みに適用することでしかないからであって、これを今からいっそう丁寧に説明することにしよう。
《2023年3月27日開催分》
力学全体の基礎となる一般原理の説明
20. 無限に小さな物体、すなわちその質量全体がただ一つの点に集められているような物体があるとし、その質量がMに等しいとする。この物体は何らかの運動を受け取っており、かつ、何らかの力から働きかけられるとしよう。この物体の運動を決定するためには、固定されていて動かない任意の平面からこの物体が遠ざかる[または近づく]のを考慮しさえすればよい。現在の瞬間に、物体からこの平面までの距離がxに等しいとする。物体に作用しているすべての力を、平面に平行または垂直であるような方向に分解するとし、Pはこの分解によって平面に垂直な方向に生じる力であって、したがって物体を平面から遠ざけようとするか近づけようとするものとしよう。時間の要素dtの後には、x+dxが物体から平面までの距離であるとし、この要素dtを一定とすると、力Pが物体を平面から遠ざけようとするか近づけようとするかに応じて、2Mddx = ±Pdt2となるだろう[すなわち、遠ざけようとする場合は符号がプラス、近づけようとする場合はマイナスになる]。そしてまさしくこの式だけで、力学のあらゆる原理を含んでいるのである。
21. この式の力をいっそうよく理解するためには、そこに見られるさまざまな量M, P, x, tがどのような単位に関係づけられるのかを説明しなければならない。そこでまず注意しておくべきなのは、物体の質量を示すMが同時に、この物体が地表付近で持つだろう重さを表すということである。したがって、力Pもまた重さの単位に帰されるのだから、文字MとPは同類の量を含むことになる。次に、物体が平面から遠ざかる速度はdx/dtに比例するので、もし我々が、この速度は重さのある物体が高さvから落下する際に得る速度に等しいと想定するなら、dx2/dt2 = vとしなければならず、すなわち時間の要素はdt = dx/√vとなるだろう。ここから時間tと距離xのあいだの比が知られる。
22. この式が決定しているのは任意の固定平面に関する物体の後退または接近だけなので、各瞬間における物体の真の場所を見出すためには、互いに直交する三つの固定平面に物体を同時に関係づけさえすればよいだろう。ゆえに、xが物体からこれらの平面のうち一つまでの距離を示すのだから、yとzはほかの二つの平面までの距離であるとしよう。そして物体に作用するすべての力をこれら三つの平面に垂直な方向へと分解したあと、そこから[合成によって]第一の方向に生じる垂直な力をP, 第二の方向のものをQ, 第三の方向のものをRとしよう。これらの力はどれも、物体を三つの平面から遠ざけようとすると仮定する。というのも、それらが物体を近づけようとする場合には、力を負にすればよいだろうからである。このようにおくと、物体の運動は次の三つの式に含まれることになるだろう。
I. 2Mddx = Pdt2; II. 2Mddy = Qdt2; III. 2Mddz = Rdt2.
《2023年5月10日開催分》
23. もし物体がいかなる力からも働きかけられず、したがってP = 0, Q = 0, R = 0であるとするなら、見いだされた三つの式は、dtが一定であるため、積分することによって次に帰着するだろう。
Mdx = Adt; Mdy = Bdt; Mdz = Cdt.
ここからまず見て取れるのは、この場合には物体が直線上を、一様な運動で進むだろうということである。したがってこれらの式はそれ自体で運動の第一法則を含んでいる。その法則のために、あらゆる物体は静止しているときにはそのままであり続けるし、あるいは運動しているときには、何らかの力によって外部から働きかけられない限り、同じ方向に一様に運動し続けるのである。しかし我々の式がまったくもってこの偉大な法則にとどまらないことは明らかであり、それに加えて、任意の力が物体に作用する際に従う法則を含んでいる。したがって、今しがた私の打ち立てた原理はただそれだけで、どのような性質のものであれあらゆる物体の運動についての知識につながりうるような、あらゆる原理を含んでいる。
24. それゆえ、まさしくこの同じ偉大な原理から、回転軸が不動のままではない場合に固体の[回転]運動を決定するということのために我々が必要としている規則を導き出さねばならないだろう。このためには、物体のすべての要素だけでなく、あらゆる要素が互いに同じ順序と同じ距離を保つことを可能にしている要素どうしの結合も考察せねばならないだろう。というのも、物体全体の運動はそのすべての要素の運動から構成されており、また各々の運動は、物体に作用している力を各要素が有し、これに加えてほかの諸要素とのつながりを絶つことを妨げるある種の力によって働きかけられている限りにおいて、今しがた私が説明した原理に従っているはずだからである。だが、諸要素が従うこの力の効果を決定する前に、そのような物体が受け入れうる運動を一般的に考察しておく必要がある。
《次回予定:2023年6月7日》