科学技術社会論学会(STS学会)の第21回年次研究大会(東京工業大学)にて、「東京女子高等師範学校に由来する物理実験機器コレクションの現状と課題」と題する報告をおこないました。これは国立科学博物館の協力研究員としての発表という性格の強いもので、アイオワ大学に大学院生として在学中の中原理沙さんとの連名です。
私はSTS学会の会員ではないのですが、東京工業大学の多久和理実さんが企画するオーガナイズドセッション「女性への科学教育および工学教育に関する歴史資料の現状と課題」に報告者の一人としてお招きいただきました。もっとも、私自身のここでの関心は、女性への科学教育あるいは東京女子高等師範学校そのものにあるというよりも、特定の教育機関で使用された実験機器群をコレクションとして記述・考察することにありました。
報告では、東京女子高等師範学校の物理教育について中原・有賀(2019)※に即して簡単に紹介したあと、現在は国立科学博物館が所蔵している物理実験機器の整理について、現状と課題を述べました。博物館資料論の観点からは、コレクションの範囲の確定、個々の資料の同定や年代の推定、コレクションの形成過程の考察、といったことが課題だと考えています。
この資料群は、それまで事実上の未整理状態にあったものを、私自身が博物館在職中に整理に着手したものです。きわめてゆっくりとではありますが、数年間かけて断続的に作業を進めてきたということもあり、それなりに思い入れがあります。すでに正規の博物館職員ではなくなってしまいましたが、きちんと目録を整備して後に残すことが自分の果たすべき責任と思っています。
※中原理沙・有賀暢迪,2019. 「女性物理学者の出身校としての東京女子高等師範学校:乙部孝吉の物理教育に着目して」『国立科学博物館研究報告E類:理工学』42: 11-24.